【デザインスプリント】Design Sprint Newsletter #190
闇に打ち勝てるのは強さではない / That is not strength that overcomes darkness.
◆ワークショップ参加者をプロ並みに参加支援する方法
How to ONBOARD Workshop Participants like a PRO (do these 4 things!)
初心者ファシリテーターが犯しがちな致命的なミスとは?
ワークショップを成功させるためには、ファシリテーターが適切な準備を行うことが不可欠です。しかし、初心者のファシリテーターの多くが陥りがちな落とし穴があります。それは参加者のオンボーディング不足、参加支援不足です。
AJ&Smartのシニアファシリテーターであるアルマー氏は、8年間の経験の中で、数多くのワークショップの進行役を担当し、何百人もの人々をトレーニングしてきました。しかし、彼自身も最初の頃は多くのミスを犯し、準備不足が原因でワークショップがうまく進まないことがあったと語ります。
「オンボーディング」とは、ワークショップの前に参加者に必要な情報を提供し、適切な期待を持たせるプロセスのことです。これを怠ると、以下のような問題が発生します。
参加者が誤った前提で参加し、議論が噛み合わない
途中で混乱を招き、ワークショップの進行が滞る
そもそも参加者がワークショップに来ない
では、どのようにすればスムーズなオンボーディングができるのでしょうか?アルマー氏が推奨する4つのステップを紹介します。
1. できるだけ早く参加者のスケジュールを確保する
ワークショップの日程が決まったら、すぐにオンラインのカレンダーに招待を送ることが重要です。よくあるミスは、「クライアント側がメンバーに伝えているだろう」と思い込むことです。しかし、それを他人任せにすると、重要な参加者が別の会議を入れてしまうこともあります。
また、カレンダー招待にはワークショップの目的や意義を簡潔に記載し、参加者に「なぜ自分が呼ばれているのか」を明確に伝えましょう。
2. 事前アンケートを実施する
ワークショップの前に、参加者に短いアンケートを送ることで、チームの認識のズレや課題を把握できます。AJ&Smartでは、以下のような質問を活用しています。
このセッションで議論すべき最も重要な課題は何か?
どんな機会やチャンスがあるか?
あなた個人として、このワークショップで得たい成果は何か?
事前に共有すべき資料はあるか?
特にクライアント向けのワークショップでは、この事前アンケートがあることで、ワークショップの進行が格段にスムーズになります。
3. ワークショップの詳細情報を1つのメールで送る
カレンダー招待とアンケート送信後、ワークショップの数日前に詳細情報をまとめたメールを送ります。このメールには以下を含めます。
ワークショップの目的、なぜ今開催するのか
日時と場所(カレンダー招待に情報が含まれていても再掲する)
簡単なアジェンダ
事前アンケートのリンク
(リモートの場合)ツールの使い方説明とチェックインボードのリンク
4. チェックインボードを作成する(リモート向け)
リモートワークショップでは、MiroやMuralといったツールを使うことが一般的ですが、参加者全員がそれらに慣れているとは限りません。
そのため、ワークショップ前に「チェックインボード」を提供し、簡単な操作練習をしてもらうことが重要です。加えて、企業のIT環境による社外ツールへのアクセス制限がないか事前に確認できます。ワークショップ開始直後に「ツールにアクセスできない」というトラブルが起こると、貴重な時間を無駄にしてしまいます。
スムーズな準備がワークショップ成功の鍵
これらの準備を徹底することで、ワークショップの質は飛躍的に向上します。スムーズな進行を妨げる問題を事前に防ぎ、参加者が効果的に議論できる環境を整えることが、ファシリテーターの役割の一つです。
特に、クライアント向けの重要なワークショップでは、オンボーディングを怠ると大きな混乱を招く可能性があります。ぜひ、これらのステップを取り入れて、より効果的なワークショップ運営を実現してみてください。
◆AI、スタートアップ、そして仕事の未来 (via. Jake&JZ)
AI, Startups, and the Future of Work
AI時代に変わるもの、変わらないもの——「創造すること」の意味はどうなるのか?
近年、AI技術の進化は目覚ましく、ソフトウェア開発やビジネスのあり方を根本から変えつつあります。しかし、その変化の中でも「変わらないもの」はあるのでしょうか。このPodcastでは、Character Capitalの共同創業者であり、『Sprint』『Make Time』の著者でもあるJakeとJZ(John Zyratsky)、そしてAI動向に詳しいEli Blee-Goldman氏の対談をもとに、AIの進化が私たちの創造性や仕事観にどのような影響を与えるのかを考察します。
AIの進化がもたらす「質的飛躍」
最近のAI技術の発展は、単なる精度向上を超えた「質的飛躍」を遂げています。たとえば、OpenAIの最新モデル「o3」は、物理学博士レベルの問題において88%の正解率を記録し、過去のモデルを大幅に上回りました。これは、AIが「考える時間を増やす」ことで飛躍的に能力を向上させるという新たなアプローチによるものです。
従来のAI研究では、より多くのデータと計算能力を投入すればモデルの精度が向上すると考えられていました。しかし、最近の研究では、計算処理時間を伸ばすことでより高度な推論が可能になることが明らかになっています。この発見により、AIが単なる「自動化ツール」から、「より深く考える存在」へと進化していることが示唆されています。
変わらないもの——「人間の創造性」と「主体性」
AIが急速に進化する一方で、「変わらないもの」も存在します。それは、「創造の喜び」と「主体性(エージェンシー)」です。
Jake氏は、かつて画家を志しながらも、最終的にテクノロジーの道を選んだ自身の経験を語ります。彼が大きな影響を受けた画家カラヴァッジョの作品は、圧倒的な技術力と表現力を持ち、Jake氏に「自分の進むべき道はここではない」と悟らせたそうです。人は単に創造するだけでなく、「どのように創造するか」「何を創造すべきか」という問いに向き合いながら、自分に合った道を探していくのです。
また、Eli氏は「主体性」の重要性を指摘します。たとえAIが人間より優れた能力を持っていたとしても、私たちは「自分で何かを創りたい」という欲求を捨てることはないでしょう。たとえば、寒い冬の日にランニングをすること自体に意味があるように、創造のプロセスそのものが価値を持つのです。
プロトタイピングの進化と「創造のプロセス」の変化
AIがさらに進化すれば、製品開発のあり方も変わります。現在、デザインスプリントでは1日でプロトタイプを作成し、ユーザーにテストしてもらいますが、AIがより高度な生成能力を持つことで、「ほぼ完成形」に近いプロダクトを即座に作れる未来が訪れるかもしれません。
その場合、製品開発は「アイデア→試作→ユーザーテスト」のループを極限まで短縮し、常にユーザーと対話しながら進めるスタイルになる可能性があります。かつては数ヶ月かかっていた「実装フェーズ」が消滅し、プロトタイピングの連続がそのまま製品になる時代がやってくるかもしれません。
AI時代の倫理と「人間らしさ」の再定義
Eli氏は、AIがますます人間らしくなっていく中で、「AIに対してどのような倫理的権利を与えるべきか?」という問いが重要になると指摘します。たとえば、AIがセラピストや教育者として活躍する未来では、それを単なる「ツール」と見なすことが妥当なのでしょうか。このような倫理的議論が今後さらに深まっていくと考えられます。
AIと共に生きる未来へ
AIは今後、私たちの仕事や創造活動にさらに深く関わっていくでしょう。しかし、それによって人間の創造性が失われるわけではありません。むしろ、より良い創造のための「相棒」としてAIを活用する時代が訪れるのではないでしょうか。大切なのは、技術を活用しながらも、自らの主体性を保ち続けることです。
私たちはAIに何を求め、どのように活用すべきなのか。その答えを探ることが、これからの時代において重要な課題となるのではないでしょうか?
◆Miroで人気のテンプレートを作る5つの秘訣とは?
Facilitator SchoolのDaniel氏が語る、Miroverse(Miroのテンプレートコミュニティライブラリ)で成功するためのポイント
オンラインホワイトボードMiroのテンプレートライブラリMiroverseで最も多くの「いいね」を獲得したテンプレートを受賞したFacilitator SchoolのDaniel氏が、その成功の理由と効果的なテンプレートの作り方について解説しています。彼らはこのテンプレートを作ったことで多くのユーザーに届いただけでなく、新たな顧客や受講者も獲得しました。では、どのようなポイントが成功につながったのでしょうか?
1. シンプルにする
Miroverseで人気のあるテンプレートの多くは、意外にもシンプルな構造です。
「Emotions Wheel Icebreaker」 … 円の中に感情が配置されているだけのシンプルな構造。
「Mario Kart Sprint Retrospective」 … 直感的に使えるレトロスペクティブ用テンプレート。
「Effective Meetings Template」 … いくつかのフレームと簡単なテキストだけで、会議を効果的に進めるガイドとなる。
シンプルにすることで、ユーザーにとって使いやすくなるだけでなく、作成者側も短時間で制作できます。Facilitator Schoolが作成した「Character Mix and Match Icebreaker」も、わずか半日で完成しました。
Character Mix and Match Icebreaker
https://miro.com/miroverse/character-mix-and-match-icebreaker/
2. 視覚的に魅力的にする
デザインの工夫が施されたテンプレートは、ユーザーの関心を引きやすくなります。
「Reflection Island」は、チームが振り返りを行うためのスペースを提供し、イラストが直感的な流れを作り出しています。
視覚的な工夫を加える方法として、以下の2つがあります。
Miroの画像・アイコン検索機能を利用する。
オープンソースのイラストライブラリから適切なイラストを探す。
3. 構造を明確にする
Miroのキャンバスは無限に広がるため、適切な構成がないとユーザーが迷います。
上から下、左から右の情報の流れを意識する(書籍やウェブサイトのように自然なレイアウトを作る)。
重要な情報はフォントサイズや色で強調する(見出しは大きく、重要な部分は太字にする)。
「Ecosystem Mapping」テンプレートは、タイトルや説明文が視線の流れに沿って整理されており、使い方が直感的に理解できます。
4. デザインを洗練させる
見た目の美しさは、テンプレートの評価に大きく影響します。
Miroは共同作業ツールなので、テンプレートを使う人は「他の参加者にどう見られるか」を気にします。
美しく整ったデザインのテンプレートを使うことで、会議やワークショップの質も向上します。
デザインを洗練させるための具体的なポイント:
「色の統一感」 … 主要色を決め、その明るいトーンと暗いトーンを組み合わせる(例:「Journey Map」テンプレート)。
「適切な余白」 … 要素の間隔を統一し、バランスの取れたレイアウトにする。
「フォントの組み合わせ」 … タイトルと本文で異なるフォントを組み合わせると、洗練された印象になります。
5. 公開前にフィードバックを得る
テンプレートを完成させる前に、SNSや社内で公開し、フィードバックを得ることで以下のメリットがあります。
改善点が明確になる … 事前に意見をもらうことで、微調整がしやすい。
期待感を高める … 事前に公開することで、「いつリリースされるのか?」と期待する人が増える。
例えば、Daniel氏が「Character Mix and Match Icebreaker」を公開する前にLinkedInで共有した際、多くのユーザーが「欲しい!」と反応しました。このように、公開前から注目を集めることで、リリース後の使用率を高めることができます。
最後に… 迷ったら公開しよう!
「完璧なテンプレート」を作ろうとすると、なかなか公開できなくなります。大切なのは、「十分に良い」と思えた段階で公開し、フィードバックを受けながら改善していくことです。作ったテンプレートは、簡単に公開できます。
参考:Miroverse 公開用チェックリストとガイドライン
Daniel氏は、「もしあなたが私たちより良いテンプレートを作ったら、賞をお送りします!」と語っています。Miroverseで自分のテンプレートを成功させたい方は、ぜひこの5つのポイントを試してみてください!
憧れの、壁一面本棚を設置しました。いい感じなのですが、すでに本に対して本棚がたりません…
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