【デザインスプリント】Design Sprint Newsletter #017
汝、人の心に似せて機械を作ってはならぬ / Thou shalt not make a machine in the likeness of a human mind.
◆オンラインホワイトボードの達人になるための20のテクニック(11月12日オンラインセミナー)
なんと16年、800回以上も続いているCSS Niteにお声がけいただき、オンラインセミナーで話すことになりました。オンラインセミナーではニッチなテーマが喜ばれる?!とのことで、始めは「デザインスプリントに学ぶオンラインツール活用の勘所」というタイトルにしましたが、ちょっと内容が曖昧すぎたのでサブタイトル「オンラインホワイトボードの達人になるための20のテクニック」と称して話すことにしました。
オンラインホイトボードとしてMiroを中心に話しますが、何か特定のホワイトボードツールに依存するのではなく、Google Jamboard, Microsoft Whiteboard, FigJam, MURAL, Klaxoon, Strap 等々、さまざまなツールで活用できる普遍的なテクニックを話します。それに加えて、もともと話したかったリモートデザインスプリントでの様々な工夫を取り入れることによって、すぐに何か役立つことと、リモート環境に限らず、末長く役立つことをお伝えする予定です。有料ではありますが、十分その価値がある内容のつもりです。このセミナーがうまくいけば、また続編もあると思いますのでどうぞよろしく。
話題としては、ホワイトボードにロックをかけるのを忘れて、ぐちゃぐちゃになった失敗談とか、ちょっとした工夫で、参加者全員がスムーズに使える技など、ノウハウや経験を惜しみなく披露します。ここだけの話「20のテクニック」とありますが、あまり深く考えずに出てきた単なる数字なので、実際はもっとたくさんのノウハウをお伝えするかもしれません。ホワイトボードなんて、誰でもすぐ使えるだろ!と侮ることなかれ、配慮の行き届いたテクニックを知るだけで、仕事の仕方やデザイン作業の進め方、会議や議論、それこそデザインスプリントのスムーズさが変わるハズです。
議論と発想、意思決定、クリエイティビティを加速する
オンラインホワイトボードの達人になるための20のテクニック
https://cssnite.doorkeeper.jp/events/128349 (←申し込み)
いま申し込みいただければ、当日タイミングが合わない場合でも、後日公開されるアーカイブを観ることができます。
◆Miroの本気度が伝わる Distributed 2021 レポート
2021年10月19日から20日の2日間、オンラインホワイトボードのMiroが主催するDistributed 2021というオンラインカンファレンスが開催されました。アメリカ向けの時間帯と、アジア向けの時間帯と2回繰り返して配信され、一部のセッションには日本語通訳もあり、その上、参加無料という大変参加しやすく有益なオンラインカンファレンスでした。配信された内容は編集後、1週間後くらいを目処にアーカイブ配信される予定とのこと。世界的にリモートワークが広がったこともあり、Miroはここ1年あまりで、とても成長しているサービスです。Miroのおかげで人生が変わった!とまで言い切るセッション発表者も居たほどです。
一番のニュースとしては【Miro Smart Meetings β】の登場です。オンラインホワイトボードとしての新機能だけでなく、ビデオ会議の機能も統合したコミュニケーションツールとなるもよう。Zoomなどで便利に活用していたチームごとに部屋を分割するブレイクアウトルームもMiroに搭載されるもよう。従来のMiroにもビデオ通話の機能はあったので、映像や音声の品質は気になりますが、複数のツールを切り替えて使わなくてもよくなるのであれば、大歓迎です。
また会議用のテンプレートがたくさん用意されており、新しく可愛らしいスティッキー(シール)が用意されたり、オンラインミーティングをスムーズに、かつ楽しく実施するための様々な工夫が展開されています。Jake が用意したデザインスプリント要素のつまったオンラインミーティング用テンプレートも紹介されました。実際のミーティングで使ってみるのが楽しみです。
上記の発表に加えてユーザーからの要望の多かったフローチャートや構成図などを素早く作れるダイアグラム作成機能とか、(英文に限られますが)付箋に書かれている内容を読み取ってまとめて並べ直してくれるクラスタリング機能とか、ユーザーの要望に次々と応えてくれている感じが、今後も期待のMiroです。
個人的に大変注目していた Jake Knapp と Marina Yancheva (Experience Design Team Lead | Workshop facilitator @ SoftServe) のセッションは “Do Meetings Need a Rebrand?” (抄訳:会議は再発明が必要?)というものでした。
JakeらにとってMiroの利点、理想的な会議は次のとおり:
●意思決定プロセスを保存しておき、いつでもそれを振り返ったり、説明したり、さらに議論を進めることができる。何がどう決まったのかが見えてくること
●議論で言葉をぶつけるのではなく、Miroを活用した「沈黙のミーティング」によって、参加者の声の大きさや役職の上下関係でなく、アイデアの質や多数決で意思決定が導かれる。
●チームの多様性の力を引き出し、集団としての知性を発揮させることができる
Jake が Miro Smart Meetings のために作ったテンプレートは、ミーティングの典型的な11ステップを示したものです。基本的なルールを確認し、議論すべき情報をシェア、アイデアを考えたり、意思決定したり。ここでは素早く意思決定するために NOTE-N-VOTE という方法を使っています。また場合によっては11工程のあるステップを省く場合や、次の工程のためにどの作業をするのか?質問のタイミングや、個々人での作業タイムなど、短時間で成果が得られるミーティング手法をデザインスプリントから導き出しています。
とくに Jake が需要だと考えているのは、各参加者が無言で作業したり、考えたりするサイレントワークとのこと。書きながら何かをする、話しながら何かを考えるではなく、書く時は書くこと、話す時は話すこと、聞く時は聞くことに集中する。そうすることでアイデアの質が上がり、正しく議論が進んでいくとのこと。
今後はファシリテーションにとても価値があるという認知が広がり、大切な議論や検討のためのミーティングには声の大きな議論が得意な人がその場を制するのではなく、進行役として専門のファシリテーターを有償で雇うになっていくであろうと考えているそう。経験を積んだ有能なファリシテーターがその場の状況から力を得、質の高い考えを参加者から導き出し、解くべき課題を見出し、目的としていたゴールに近いところに引き上げるために、必要な環境を作っていくことが求められているということ。
アフターコロナの時代は、ちょっとした会議でも専門のファシリテーターが議論を牽引する時代になると予想しているそうです。
◆集合知で予測の精度は高まるが、正しい決断を下せるとは限らない
前回、素早く意見を収束させる方法として「ドット投票」を紹介しました。ちょうどタイムリーにハーバード・ビジネス・レビューから大変示唆のある記事が公開されていました。
集合知で予測の精度は高まるが、正しい決断を下せるとは限らない
https://www.dhbr.net/articles/-/8055
ここで読み違えてはいけないのは、集団で議論して決定することが良くないということではありません。多様性をもった参加者の考えを集めることで、数字やパラメータの予想精度は高くなります。けれども判断が難しい YES/NO といった決定をしなければいけない状況の場合、必ずしも多数決や、専門家の意見が正しいとは限らないという話です。また人の意見に影響されすぎる人の判断がイマイチであることも紹介されています。
映画「2001年宇宙の旅」でも知られるSF作家、アーサー・C・クラークが提唱する法則の一つに「高名で年配の科学者が可能であると言った場合、その主張はほぼ間違いない。また不可能であると言った場合には、その主張はまず間違っている」とある通り、専門家ゆえに視野が狭まってしまう状況もあるかもしれません。
誰も納得する100%正しい判断ができないような状況であれば、意思決定者、予算を握っている人、誰かが責任を持って判断し、その判断が間違っていた時にも素早くやり直したり、修正したりしていける方法を考えていくのが良いのかもしれません。
◆Miroの投票機能が充実
前回「ドット投票」の際には、投票機能を使わずに、丸いマークを用意して行った方がスムーズ!という話をしましたが、最近 Miro の Vote(投票)機能が大変充実し、ドット投票用に、わざわざいろいろと用意しなくても、まあこれでいいんじゃないかな〜という気分になっています。
Voting : Miroボード上で投票セッションを設定することができます
引用元: https://help.miro.com/hc/en-us/articles/360017572274-Voting
設定できる項目は次のとおり:
●一人あたりの投票数の設定
●投票時間を区切るためのカウントダウンタイマーの設定
●票の使い方:参加者が1つの案に対して1票しか投票しない場合と、1つの案にいくつでも投票して良い方法とを切り替えることができる
●投票対象:投票してもらいたい案が書かれている付箋紙を選択
この Miro の Voting 機能を活用すると、参加者は自分が何票持っているかを把握しながら投票できることと、制限時間を設定することで、素早くスムーズな意思決定、収束が可能となります。一方、時間制限が少なすぎて、いい加減な投票になってしまわないよう、投票そのものの時間が短くとも、その前の議論に十分な時間をかけることが必要です。また投票が必要な場面ではあらかじめ参加者に「いまここで行っている作業で出てきた案には、次の工程で投票しますよ!」と投票のことを意識しながら聞いたり考えたりしていくと良いでしょう。
なによりも Miro の投票機能を使うと、投票完了次第、集計が終わっているので、案の数や参加者の数が多い時にはとくに便利に使えると考えています。ただ、注意点としては、現状投票結果は保存されないので、別途記録を残しておく必要があります。お忘れなく!
◆さて、CSS Nite の「オンラインホワイトボードの達人になるための20のテクニック」セミナー、夜も寝ないで昼寝して、渾身の力を込めて準備中ですので、ぜひともご参加ください! 参加登録→ https://cssnite.doorkeeper.jp/events/128349
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