【デザインスプリント】Design Sprint Newsletter #015
リモートワークのおかげでリモートでできるものができたのはリモートワークのおかげです / Thanks to remote work, it is thanks to remote work that we can do what we can do remotely.
◆イベントレポート:Design Matters 21
先日お伝えした、デンマークのコペンハーゲンで2021年9月29日から30日の2日間開催された Design Matters 21 というイベントにオンラインで参加しました。コペンハーゲン現地では、新型コロナウイルスのワクチン接種済み、または抗原検査による陰性証明を前提に対面でのイベントが開催されていました。オンライン配信で現地の様子が見られたのですが、密集した観客席や、参加者の面々がマスク無しで立ち話している様子を見ると、なんだか別世界というか、過去か未来を覗き見ているような不思議な気分になりました。
Design Matters 21 で期待の Ross Chapman 氏による Remote Design Sprint に関するワークショップ “Imagining the future of hybrid collaboration(ハイブリッドコラボレーションの未来を想像する)” は、Butter というバーチャルワークショップ専用のツールを活用して行われました。Ross Chapman 氏の進め方や、Butter での大規模ワークショップがどのように進められていくのか注目しながら参加していました。蛇足ですが Butter は最近大型調達を済ませたデンマークのスタートアップ企業です!
私自身 Butter でこれだけ大人数で何かしたのは初めてだったのですが、カメラをONにしなくても可愛いイラストでアバター表示されるので、大勢の参加者で盛り上がっている感じがして良かったです。自分の風貌に似たアバターを設定したら、ロックバンドZZ Topの人みたいになりました。また Butter とオンラインホワイトボード Miro の画面とが統合されており、ツールやブラウザのタブといった画面を切り替えずに Butter 画面だけに集中して進められるのも良い点でした。Buffer にはバー表示タイプのカウントダウンタイマーや、アンケート機能もあり、もうこれだけでワークショップに必要な要素は網羅していると言えるかもしれません。
さらに Chapman 氏の準備も万全で、Butter と連携した Miro のホワイトボード上に、あらかじめ作業用のテンプレートが用意してあり、参加者はそれに書かれた指示と、作業領域でスムーズに進めていくことができました。参加人数が多いとリモートワークショップは混乱しがちなのですが Chapman 氏が適切な順序でポストイットの記載事項を取り上げ、発言する人に呼びかけることで、短時間のワークショップながらもとてもスムーズな進行が印象的でした。
いくつかのインサイト(気づき)は….
●ワークショップの開始時間になるまで、チルなミュージックビデオを流していた。リラックスして参加しはじめられるだけでなく、開始前に音声や動画再生などのトラブルを察知できるのも良い点。オンラインセミナーで開始前に無音や静止画だと少し不安になりますよね。
●ワークショップの最初に少しだけでも良いので、皆でリアクション機能を使ってみて練習をする。リアクションお願いします!と言うだけだと誰もやらない。
●ワークショップの時間が短いせいもあるが、Butter や Miro の使い方をわざわざ時間をとって説明するのではなく、簡単な作業練習でやりながら解説していった。
●本題に入る前に、簡単で誰もが答えやすい問いかけに答えてもらい、発言や書きこいに対する心理的壁を取り払う工夫をしている。
●Miro の機能を使いすぎない。できるだけ事前にテンプレートとして用意しておく。例えば Miro の投票機能を使わずに、☆印を用意して移動してもらったり、ポストイットをあらかじめ配置しておいて、それに書き入れてもらうなど。
●Miro のテンプレートには「記入例」を用意しておく。枠組みだけのまっさらなところに最初に書き入れるのは気がひけるので、何かあらかじめ書いてあると次に書きやすくなる。
●ワークショップの進行で、口頭で説明があった事柄は、Miro のボードにも説明書きが用意されている。そうすると聞き逃した時や、作業中に再度確認したくなった時に、他の人の手を煩わせずに自分だけでできるようになる。
●発言や Miro の付箋紙だけでなく、チャットをうまく活用している。これは参加者のリテラシーやコミュニケーションスキルが高いことが背景にあるかもしれません。
●メインの進行役と、サブの進行役が居て、ワークショップの進行を司る役目と、参加者をフォローしていく役目がうまく分担されていた。
などなど、いろいろ知っていたこともありますが、新しい学びも多かったワークショップでした。Design Matters 21 ほかにも素晴らしいセッション満載でした。特に Dear Data の Stefanie Posavec さんのセッション "Designing data with a ‘Post-Infographic’ mindset(インフォグラフィックの後を意識したデータ設計)” はとても示唆に富んだ内容でした。デザインスプリントとは直接関係が無いですが、また何かの機会にレポートできればと考えています。
◆イベント情報:Miro Distributed 2021
< https://miro.com/distributed2021 >
オンラインホワイトボードの Miro が企画する大規模なオンラインカンファレンスが Distributed 2021 です。Distributed は 2019年に始まったオンラインイベントで、コロナ禍のもと開催された Distributed 2020 に続き、2021年は 10月19日から20日の2日間予定されています。参加は無料ですが登録が必要です。たぶん開催後にほとんどのセッションは YouTube で公開されると思われます。
注目のセッションは「全部!」と言いたいところですが、デザインスプリントの発案者の一人である Jake Knapp 氏の “Do Meetings Need a Rebrand?(会議にはリブランドが必要?)” というセッションは特に注目です。ほかにも Miro の使いこなし術や会議での活用法、Miro の今後のロードマップなどが聞けるのではないかと期待しています。
※Distributed 2021のサイトより、スピーカー一覧(一部)
◆イベント情報:CSS Nite デザインスプリントに学ぶ、オンラインツールの勘所
< https://cssnite.doorkeeper.jp/events/128349 >
機会をいただき、「デザインスプリントに学ぶ、オンラインツールの勘所」
というオンラインイベントに登壇させていただくことになりました!
会社の経費で参加できる人は 5,000円、学生や休職中の人ほか、自腹で参加する人は割引価格 2,700円という粋な計らいをしています。おもにリモートデザインスプリントのテクニックを紹介するほか、リモートワークでいかにクリエイティビティを引き出していくのかといった、デザインスプリントから学べる要素に着目して紹介していきます。もちろん今までのニュースレターの内容を詳しく紹介できる良い機会なので、多くの皆さんに参加していただければと考えています!
リモートワークが続き、いろんなメリットやデメリットが生じてきました。自分自身、コミュニケーションもアイデアの引き出しも、今まで積み重ねてきた貯金を切り崩しているような気がしてならないため、なんとかしなければ!と思いつつも、日々なんとか過ごしている感じです。みなさんからもいろいろな工夫が聞けるとうれしいです。いま考えている内容は次のとおり。
リモートワークで燃え尽きない心がけ
リモートデザインスプリントから学ぶ、リモートワークの本質
100%完璧ではない環境で、集中しアウトプットを出し続ける技
リモートでもチームとしてのコミュニケーションを強化する工夫
たった一人でもクリエイティビティを加速させる方法
明日から役立つ(特定ツールに依存しない)オンラインの使いこなし
リモートワークより、理想は分散ワークを目指そう
Build Back Better:前よりも良い環境で仕事と生活を楽しもう
新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、徐々に元の社会に戻ってくるような気がしつつ、もう元に戻れないような事柄も数多く残ると考えています。そういった転換期にある今、これからいったいどうしていくのか?どうしていくのか?といった事柄を考え直すきっかけになれば幸いです。
また、リモートデザインスプリントでは様々なオンラインツールを活用しますが、クライアントワークだと、相手のセキュリティポリシーによって、自由にツールを選べない場合も多く、不便が生じたり、工夫しなければいけない場面もでてきます。だからといって全てのオンラインツールの有料アカウントを持っているわけにもいかないでしょう。ですから Miro や Zoom など主流のオンラインツールを中心としつつも、特定のツールに依存しないテクニックや工夫を紹介していくつもりです。乞うご期待!
◆今週のおまけ
Loom : < https://www.loom.com/ >
プレゼンテーション支援ツールとして Loom が様々な場面で便利に使えます。プレゼンテーション資料の中にカメラ撮影した自分の顔を円形で表示し、ビデオ会議用、プレゼンテーション動画収録用などに使えます。アカデミック用途には無料のアカウントが貸与される場合もあります。もちろんビデオミキサーや、動画編集ソフトでもできるのですが、Loom の手軽さにはかないません。最近円形に飾りを追加しポップな見栄えを選択できるようになりました。
loom の解説ビデオより
Krisp : < https://krisp.ai/ >
様々なノイズリダクション機能を試しましたが、その中でも手軽に使え、性能も素晴らしい、利用環境にもあまり依存しない Krisp というノイズ除去ツールが最強です。近所で救急車が走っていたり、近所でゴトゴト、カンカンいう音が聞こえていても自分の音声だけを抽出して相手に伝えることができます。自分の声はもちろん、ノイズや騒音の多い相手の声に krisp をかけて聴きやすくするような使い方もできます。
最後に、2021/10/9 に公開されたばかりの “Miro - Make it yours” という現実に Miro を体現した動画。Miro 知っている人であれば、間違いなくニヤリとさせられるはず。
◆この Design Sprint Newsletter がきっかけで、リアルな(といってもオンラインの)イベントのきっかけが生まれたり、少しずつですが、なんだかとても良い方向に転がり始めている感じがしています。いしたにまさきさんの2010年の名著「ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である」のとおり、やめないことが最大の秘訣なのかもしれませんね。
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→ https://designspirnt.substack.com/