【デザインスプリント】Design Sprint Newsletter #014

素晴らしい成果には時間が必要 / All great achievements require time.

◆デザインスプリントには呼ぶべき人を全員呼ぼう!

デザインスプリントは「デザインスプリントに必要だと考える人、全てに参加してもらう」ことが重要であると言われています。これは、デザインスプリントでせっかく素晴らしいアイデアやプロトタイプができたとしても、それを上司に後から結果だけ説明したり、予算を握っている人に後から説明すると、せっかくのアイデアが覆ってしまったり、そのままでは承認が通らず、先に進めないなどといったことが生じるからです。

そこで、デザインスプリントは役員クラスの人や、予算の決定権を持つクライアントなど、重要な人物を招いて参加してもらえると確実に成果があがります。スタートアップ企業などの規模の小さな集団であれば、CEOやCTOといったCxOメンバーをデザインスプリントに連れてきても良いかもしれません。

こういった、まだ全然アイデアも検討も進んでいない段階で、普通だったら避けるような、いわゆる「えらい人」を呼ぶことは、とても不安に感じます。けれどもそういったメンバーにデザインスプリントに参加してもらえた場合、そこで話し合われたこと、そこで決定したこと全てが、その「えらい人」にとって自分ごとになります。部下が勝手に考えた自分とは関係ないアイデアだとは考えずに、皆で考えた自分のアイデアだと思ってもらえるのです。デザインスプリントで出てくる様々なアイデアは特定の「誰か」のアイデアではなく、チームの「皆の」アイデアなのです。

実際は数日間、場合によってはたった数時間でも「えらい人」がデザインスプリントという本人にとってはよくわからないワークショップに参加するは難しいでしょう。その場合は、デザインスプリントのどこかのフェーズだけでも良いので短時間でも参加してもらうのです。たとえばアイデア発散のとき、投票や決定の時だけでも参加してもらえれば、頭の良い幹部や事情を正確に把握しているクライアントであれば状況を理解することができ、その後の報告についても単なる批評家目線で他人事のように判断するのではなく、自分が関わったアイデアが最終的にどうなったのかという目線で判断してもらえるようになります。

まあ、そういった感じで、根回しや工夫をしながらデザインスプリントしていくわけですが、プロジェクトによってはそう単純に一人の「えらい人」だけでは片付かない場合もあり、その時に役立つのが「ステークホルダーマップ(利害関係者の相関図)」です。

◆ステークホルダーマップ(利害関係者の相関図)を描く

複雑なプロジェクトであればあるほど、多く人や企業が関わり、それぞれの立場や目的、利益や重要視する事柄が変わってきます。デザインスプリントには参加しない直接的には関係ないけれど重要な人物も居るかもしれません。複雑なデザインスプリントを成功させるためにステークホルダーマップ(利害関係者の相関図)を描いておいた方が良い場合がほとんどです。

修羅場を渡り歩いてきた敏腕営業や凄腕プロジェクトマネージャーであれば、全ての関係者の力関係や利益相反する関係性、さらに関係者個々人の性格や資質なども把握しているかもしれません。けれども大抵の場合デザインスプリントに参加する現場のメンバーは、自分が手がけるプロジェクトにどういう人やどういう企業、どういう想定ユーザーが関わっていくのか、全体像を明確に把握している人は少ないでしょう。

人と人の関係を気にしすぎて、アイデアの質や量に影響してしまうのは本末転倒ですが、デザインスプリントの前に周囲のステークホルダー(利害関係者)のことを知っておいて損はありません。それには何も難しい図表を描く必要はありません。よくあるテレビドラマの相関図みたいので良いのです。その相関図を見て今後起こることを想像しましょう。そこから裏切りとか謀反とかスパイ活動とか不倫とか三角関係が起こるのはテレビドラマの中だけであって欲しいものですけれど。相関図の把握によって想定外の「ちゃぶ台返し」を事前に避けることができるようになるのです。

ここまで聞いて面倒に感じてきた方には、ステークホルダーマップを描くための専用ツールが存在します。いまどき何でもツールがあるものです。

 smaply : Stakeholder mapping tool
 
https://www.smaply.com/tools/stakeholder-maps

このツールを用いると中心人物たち、関係性、それも公式の関係性と非公式の関係性を図示することができます。実際、会社の中で上司と部下といった公式の関係性よりも、同期や同郷といった非公式の関係性の方が影響あるかもしれません。それらの情報を可視化することで、コミュニケーションや企画提案のボトルネックになっている部分を特定し、解決すべき関係性や、積極的にアプローチすべき関係性が見えてくるのです。

ステークホルダーマップの描き方は自由ではありますが、smaplyのような描き方に加えて、顔写真が入った方が人は多くの情報を読み取ることができるのと、関係性の強さを線の太さで表現するといった表現ができるとより全体像を把握しやすくなるかもしれません。

smaply.com では他にもジャーニーマップを描くツール、ペルソナシートを素早く作成できるツール、ワークショップでポストイットに描いたジャーニーを手軽にデジタル化して取り扱えるツールなど、便利ツールが数多く用意されています。利用できるプロジェクト数に制限のある無料版から、BASIC 19ユーロ/月(2,500円弱)、PRO 29ユーロ/月(4,000円弱)などいくつかのプランが用意されています。

◆時間は守ろう。時間にまつわるデザインスプリントの工夫

デザインスプリントの各工程では、細かく時間を区切って作業を進めていくのが最大の特徴であり、短時間で想像以上の成果を引き出すポイントでもあります。

対面で実施するデザインスプリントも、リモート(オンライン)で実施するデザインスプリントも綿密な準備が無いと大抵時間が足りず、延長することになったり、工程を省略したり、中途半端なまま先に進んでしまったりします。

ここで大切なのは「デザインスプリントは時間どおりに終えて解散すること」です。その一番の理由は安易に時間延長してズルズルと続けてしまうとデザインスプリントそのものに少なからずネガティブな印象を感じてしまうからです。もちろんデザインスプリント予定時間の直後に大切な会議を入れないよう、時間的余裕を持っておいてもらうのはもちろんですが、だとしても時間延長を避けるよう配慮するのです。

時間どおり、計画通りに進めるためには次のような工夫をしています。指摘が細かすぎると思われるかもしれませんが、これら全てに気を配らなくても大丈夫です。綿密に計画し、実施は柔軟に。

●あらかじめ1分単位で進行計画を練っておきます。デザインスプリント参加メンバーに見せる進行表は10分単位や30分単位で記載されている大雑把なもので構いません。けれども進行役は、どの作業にどれくらい時間を使い、何人が話しをするから何分x何人で合計は何分必要な作業なのかといった細かい計算をしておくのです。

●時間の計画は、可能な限り細かく分割して参加者に定時します。例えばAとBの作業を80分でお願いします!といった指示ではなく Aの作業に30分、Bの作業に50分の配分でお願いします!といった感じです。実際の時間の使い方は30分と50分にきっちり分かれてなくても良いのですが、参加者にとってどれくらいの時間が使えるのかを把握した上で作業できるのと、単に制限時間が提示されるのとで時間の使い方、時間の質が変わってきます。また長すぎる作業は集中力が続かないので、細かく区切るのが得策です。

●デザインスプリントの最初に「それでは1分ずつ○○について話してください」と言って、参加者にはタイマーを見せずに話してもらうのです。そうするとほとんどの人が1分の持ち時間を超過して話します。実際には正確に時間を計っておいて「何分の予定でしたが、実際は何分も話していました!」と伝え、自分が思っているよりも数分という時間が短いこと、デザインスプリントではいつまでも話したいだけ話しているわけにはいかないことを理解してもらえます。

●デザインスプリントでは頻繁に休憩を取るようにしますが、その休憩を時間調整のクッションに使います。ただし、時間調整のために休憩を無しで続けてはいけません。例えば予定は10分の休憩時間を用意しておき、時間調整によっては休憩時間5分で次の作業に入るといった感じです。

●指示した作業がかっちり終わってから「これから休憩10分です!」などといった休み方ではなく「○○の作業をしていただき、終わり次第休憩に入ってください。何時何分に再開です」といった時間の使い方をします。この場合、根を詰めすぎて休まず作業し続ける人が出る場合があるので、休憩を先にとってもらってから作業をするという逆順でも良いかもしれません。

●デザインスプリントの進行が遅れているとしても参加者にそのことを気づかれてはいけません。「時間が無いので」とか「遅れているので」などを言ってはいけません。平然な顔と態度で進めつつ、心の中ではドキドキしながら、足りない時間をどこかで取り返す手段を考えるのです。

●時間が足りない時には忘れがちなのですが、頻繁に休憩をとった方が参加者のパフォーマンスを高い状態に保つことができます。疲れる前に休むのが重要で、疲れてから休むと回復の度合いも不十分で、回復までに時間がかかってしまうのです。目安は60分から90分あたり10分くらいの休憩を取るペースです。リモートデザインスプリントの場合はより頻繁に休み、目を休めることを心がけると良いでしょう。

●時間をかければかけるほど良いアイデアがでてくる、クオリティが高まるという考えは分かりますが、無限に時間があれば、無限にアイデアがでて無限にクオリティが高まるかというと、そうではありません。ほとんどの場合、2倍時間があったからといって2倍の成果がでるわけではありません。ですから適切な長さの時間を効率良く使い、想定の90%から99%くらいの成果で次の工程に進んでしまっても良いと割り切りましょう。持ち時間で思いつかなかった残り10%に革新的なアイデアが潜んでいることはほとんどありません。

●エンジニアリング的に考えると「きちっと何かが決まってから次の工程に進む」ということが正義ですし、そう考える人も多いでしょう。けれどもデザインスプリントの工程では「なにかちゃんと決まっていないけれど次の工程に進んでしまう」時もあります。ちゃんと決まっていないのにはちゃんとした理由があって、検討や議論が足りていない、制限事項がはっきりしていないため考えが発散しすぎているという状況があります。次の工程に進んでしまうことで、明確に判断がつくこともあるため、モヤモヤとしている状態でも恐れず先に進んだ方が良い場合もあります。

●アイデアが出し切れていないと感じた時や議論し尽くされていないと感じた場合は、単に作業時間を延長するのではなく、同じことを2回繰り返すと良い結果になります。例えば5分間考えてもらって、10分間考えたアイデアを発表してもらう。次にもう一度5分間考えてもらって、またアイデアを発表してもらうという流れです。こうすると他の人のアイデアや考えに触発されて、自分の何か新しい事柄に気づいたり思い浮かんだりするのです。予定時間5分で、全然アイデアがでてこないので、考える時間を10分に延長するといった同じ時間の使い方よりも、2回繰り返す方がより効果的です。

●どんな作業にどれくらい時間がかかる。いままでのデザインスプリントではこれくらいの時間がかかったが、今回のチームはこれくらいの時間がかかるといった風に、自分の中で標準時間を持っていると、計画と現実のズレを早めに察知することができます。

●デザインスプリントの休憩の際、作業を中断することになります。作業を中断する場合、ひと段落、つまりきっちりと区切りがついたところで、ひと安心して休憩するよりも、実は中途半端なところで中断しておいた方が次に続きやすくなります。中途半端なところで中断した場合、次の再開時の理解や立ち上がりが早く、すぐに作業を続けることができるのです。

●考えている途中にいったん中断し、リラックスする時間を作ると、集中して考え続けているときには思い浮かばなかった斬新な切り口や見落としていた課題を発見することができます。よく「アイデアが天から降りてきた」などと言いますが、実際はそんな便利なことはありません。けれども情報を頭の中に入れて、十分すぎるほど真剣に考え続けたあとにリラックスする時間がやってくると、新しいアイデアが浮かぶのです。

●作業の指示は「○分間」、休憩は「何時何分まで」といった方がうまく時間が使えます。大抵の場合、休憩に入る際、予定よりも数分前後していることが多く「それでは17分間休憩してください!」と言われても困りますよね。また細かいことですが「5分間」と「間」を忘れずに。「10時5分まで」などと勘違いしないようにするためです。

●休憩明けに遅れてくる人を待つのは1分まで。休憩時間が終わり、作業を再開するときに遅れてくる人を待っていては時間がどんどん無くなります。デザインスプリントの最初の休憩の時に「遅れないでね」と念押しし、1分しか待たないということを続けると、そのうち参加者は皆遅れずに戻ってきてくれるようになります。

●雑音になる要素、集中力を削ぐ事柄をできるだけ排除します。例えばデザインスプリント中はスマートフォンやパソコンは手元に置かないようにします。何か検索したり、事例などの調べ物をしたりする場合は、スマホを使って良い時間帯を設定し、そのときだけ使うようにするのです。またどうしても仕事の都合上、電話連絡や、スマートフォンでメッセージを送らなければいけない、パソコンで承認作業が必要といった場合は、できるだけ休憩時間に対応してもらい、デザインスプリントを行なっている部屋からいったん出て廊下や別の部屋で対応してもらいます。デザインスプリントの部屋では、デザインスプリントのことだけに集中できる雰囲気を作るのです。

●最後に。時間通りに進めるにはタイマーと時計が必須です。参加全員が見えるところにタイマーと時計を用意しましょう。以前紹介した Time Timer や miro のタイマー機能など、どんな方法でも良いのですが、参加者全員に常に「時間」を意識してもらうことが重要なのです。

Photo by Veri Ivanova

◆さて、不定期発行と宣言しつつも、なんとなく毎週発行できているこの Design Sprint Newsletter、いったん不定期発行になってしまうとズルズルと遅れがちになりそうなので、たった1行でも、毎週何か発行し続けようと考えています。余裕のある時に書いておけばいいのに、そういうわけにもいかず。これこそ Design Sprint ならぬ Writing Sprint なのかも…. と思いつつ書き続けています。

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